特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2013年 6月「震災後の消費者意識の変化からビジネスチャンスを探る」

●2013年 6月「震災後の消費者意識の変化からビジネスチャンスを探る」

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2013年 6月 「震災後の消費者意識の変化からビジネスチャンスを探る」

中小企業診断士:中津留 準

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わが国がほぼひとつの文化圏に統一されてから千数百年経ちますが、この間に共通の倫理観、価値観、美意識などが培われ定着しました。そのためほとんどの人々の思考様式や行動様式は共通化され、ライフスタイルや消費行動も均質化する傾向がみられます。

しかし倫理観は変わらなくても、価値観や美意識は社会的大事件を共通体験することで劇的に変化したことがしばしばありました。
そして、この意識の変化により消費行動も大きく変わるため、ビジネスにも大きく影響します。

このような変化は、指導者のリーダーシップで起きることはほとんどなく、多くの人々が予期しなかった大事件に遭遇し、これを共通体験することで変化します。

◆過去、大事件に遭遇して人々の意識がどのように変化したかを検証する

平和と安定が第一という江戸時代の共通意識が、黒船の来航を機に大転換した状況は多くの書物で書かれ周知されていますが、20世紀以後では先の戦争の敗戦を機に変化した例も劇的でした。

戦前は経済力も低く、多くの国民が総じて貧乏な生活をする中で国家予算の大半を軍事費に使っていましたが、国防が最重要という共通意識があったために、大きな不満は出ませんでした。また軍人や軍事産業のステータスは高く、優秀な人材は軍人を目指しました。

敗戦を機にこれが一変し、以後は物質的な豊かさを求める経済成長が共通の価値観となりました。わが国では有史以来「節約が美徳」でしたが、消費者の意識は大きく変わり、先ず量を求め、次に質を求め、常に新しいものを求めて物質的に豊かな生活の追求に邁進しました。
この時期はほとんどの産業・企業がこれに対応して高成長しましたので、日本経済全体が高度成長をしました。

1970年頃に広く注目され出した「公害問題」は消費者意識が変わるきっかけとなりました。すでに数十年前から各地で公害に苦しむ人々が存在したにもかかわらず、経済成長至上主義の価値観から政治も行政もマスコミもこれを積極的に取り上げることは少なく、ほとんどの人々は無関心のまま過ごしてきました。

しかし、1968年に水俣病が公害認定されたことからマスコミも積極的に取り上げるようになり、各地で発生している公害問題が広く知られることになりました。多くの人々が身近な問題として認識したことで、公害問題への対応が共通意識となりました。

1970年に開催された大阪万博は、「進歩と調和」をテーマとして各パビリオンが技術の進歩と豊かな生活への活用を競い合いましたが、唯一北欧5カ国のスカンジナビア館は公害をテーマとしました。地味なテーマと受け取られたために開館当初は人気がなく、他に比べて訪れる人も少なかったのですが、開催中に人々の公害への意識が高まったことで、後半は大勢の観客が押し寄せて満員となったと言われています。

1971年には環境庁も設置され、国の本格的な取り組みも始まりました。人々の意識が公害問題、環境問題にシフトして価値観が大きく変わり、消費行動に大きな影響が出たことでビジネスのあり方も変わり、新たなビジネスチャンスも発生しました。

続いて1973年に発生した第1次オイルショックも人々の意識を大きく変えました。戦後の高度成長が続く中で「消費は美徳」と言われ、実際に消費が成長を促進させる好循環になっていました。ところがこの事件を機に「資源には限りがある」ことが認識され、一気に「省資源」が共通意識になり、省エネ製品や省エネシステムなどの普及が進みました。

1990年から始まったバブル崩壊による意識の変化は、生き方ではなく経済的価値観についての意識の変化という点で従前の例とは異なりますが、消費行動は大きく変わりました。

◆東日本大震災による消費者意識の変化を分析する

このたびの東日本大震災により、多くの人々に共通する意識が大きく変わりました。戦前への反省から、戦後は個人主義が尊重され、これに反するような主張は公の場では発言しにくい雰囲気がありました。

しかし震災後に最も重視された言葉は「絆」であり、「日本は一つ」という言葉も多く発せられました。古来、日本社会では最も大切にされた価値観であり、潜在意識としては続いていたのですが、顕在化したことで後述するようなさまざまな消費行動が起きました。

また、社会貢献意欲も高まり、ボランティア活動や募金活動への積極的な参加が促進されました。このような意識も潜在的には多くの人々に共有されていましたが、震災を機に顕在化されたことで、この意識を反映した消費行動が起きています。

安全・安心への関心も高くなり、今まではただと思っていた「安全・安心」にコストをかけるという意識も強まりました。かつての公害問題以来意識されてきた「自然環境」も、震災を機に「災害」という視点が加わり、さらに高まりました。
一方で自身の生活や将来に対する不安も高まり、これも消費行動に影響しています。

このような多岐にわたって意識が変わったのは敗戦時の変化に次ぐものであり、今後の消費行動に大きく影響すると予測されます。

「レジャー白書2012(公益財団 日本生産性本部発行)」の国民の意識調査、「震災による考え方の変化」の調査データによると、「あてはまる」「ややあてはまる」を含めた意識の変化で大きな比率を占めるのは、次の項目となっています。

@ 安全・安心を求める気持ちが強まった 67.4%
A 自分の将来の生活に対する不安が高まった 66.6%
B 人の「絆」や「繋がり」を大切に思う気持ちが強まった 64.3%
C 他人や社会のために何かしたいと思う気持ちが強まった 53.3%、
D 自然や環境を大切に思う気持ちが強まった 52.6%、
E 日本の閉塞感が強まった 52.5%

このような意識の変化が、その後の消費行動にどのように影響したかを2011年下期〜2012年上期の新聞報道等で見ますと、「絆」「繋がり」重視の影響では、おせち料理の予約状況は例年に比べて大幅増加(11/23日経)、年末年始の家族向けギフトは大幅増(1/25日経MJ)、デイズニーランドの下期の入園者数は過去最高、中高年集客策実る(日経MJ)、イク爺消費花咲かす⇒バリアフリー施設・孫育て講座盛況(5/25日経)、男性限定のカラオケ・ヨガ・料理教室が花盛り(2/25日経)などが目につきます。

また安全・安心関連では、産地選べる検査済み表示食品を優先購入・ミネラルウォーター・浄水器の販売増(3/7日経MJ)、介助士が買い物手伝い、商品表示・配列に工夫してスーパーが高齢者をサポート(11/19日経)、金具・突っ張り棒などの家具の転倒防止用品・省電力機器等の品揃えを充実したホームセンターが一人勝ち(1/28日経)ほか多数あります。

社会貢献関連では、「買い物意識調査では目先の利益よりも社会貢献につながる買い物を重視する」と答えた人が多かった(6/8日経MJ)、被災地寄付等の地域応援可能なポイントカードが広まっている(2/21日経)、被災地のアンテナ店の販売好調、中高年は被災地支援につながる消費に意欲(3/9日経)などが見られます。

これらはほんの一部であり、震災後の人々の意識の変化の影響による消費行動への影響は連日のようにテレビ、新聞等のマスメディアで報道されています。

また震災を機に、より関心の高まったソーシャルメディアによる情報からもこの傾向が窺われます。

これらの情報を注意深く観察することにより、多くの人々の意識の変化が消費行動にどのような影響を与え、それによりビジネス動向どのような影響を与えたかが分かり、今後どのような影響を与える可能性があるかも把握できると考えられます。

消費者意識の変化により既存ビジネスのあり方を変える必要が生じる可能性もあり、場合によってはビジネスモデル自体を変える必要も生じるため、この対応が企業の盛衰を左右すると考えられます。

また、自社の強みを生かせるビジネスチャンスが新たに見つかる可能性もあるため、従前とは異なる視点で市場を観察し、柔軟な発想で対応することが必要です。

◆震災後の消費者意識の変化からビジネスチャンスを探る

このような意識の変化はビジネスチャンスを生む可能性が高いと考えられますが、ビジネスチャンスを見つけるためにはどこに着目すればよいかを考えてみます。

すでに定着しつつある環境の変化として「少子・高齢化」「成熟化社会・知価社会」「情報化の進展」「国際化の進展」「雇用慣習の変化」などさまざまなものがありますが、これらの変化とこのたびの変化を組み合す、あるいは今回変化した各要素を組み合わせて考えることも一方です。

かつて日本人は「水と空気と安全はタダ」という意識が強いと言われてきましたが、震災以後は「安全」にコストをかける意識を持つ人が増えていいます。

「安全」の対象も災害、防犯、健康、交通事故など多岐にわたり、そのどれからも安全を確保したいと思うのは当然ですが、人により何を重視するかの優先度は異なるため、自社の強みが活かせる分野でのニーズを探り出し、差別化した「安全」を提供することが必要です。

また前述した手法で「安全」と「絆」を組み合わせると、違う局面も見えてきます。離れて住んでいる高齢の親や子供の「安全」を守りたいというニーズは多いと予測されるため、これを満す商品・サービスの需要は多いと考えられます。

「高齢化」と「安全」を組み合わせて考察すると、高齢者向けの美容等の出張サービスや買い物サポートサービスの需要は増えると予測されますので、高齢者ニーズを的確に把握した差別化されたサービスを開発することで、ビジネスチャンスは生まれると考えられます。

老朽化した住宅に住む高齢者も多く存在しますが、耐震性や漏電の危険性が高いケースも多いと考えられます。建設や電気に関する専門家がこの対応をサポートすることが必要ですが、自前でコスト負担できるケースは少ないため、行政等は働きかけて公的費用で対応できれば社会貢献とビジネスが両立できます。

また企業の場合は「BCP(事業継続計画)」が注目されていますが、経営資源の少ない中小企業では、これに取り組む余裕がないというケースが多く、なかなか普及しません。
そこで公的助成金等の活用を図るとともに、低コストで維持管理できる仕組みを開発することで、潜在需要を掘り起こすことができると考えられます。

「絆」と「社会貢献意欲」を組み合わせると、被災地と他の地域の情報交流を円滑にする取り組みが考えられます。現在でも被災地の実情を的確に知る人は少ないため、応援したい気持ちがあっても生かせない人たちが多く存在します。

一方、被災地の人はどのように情報発信すればよいのか分からずにいる人も多いため、これをサポートして双方の情報の質と量を高めて結びつけることによりモノもヒトも動き、そこにビジネスチャンスが生まれる可能性は高いと考えられます。

「絆」と「将来の生活に対する不安」組み合わせると、永続的な仲間やパートナーづくりのニーズが見えてきます。人口動態統計を見ると婚姻数も出産数も微減傾向が続いており、当面はもっと手軽な仲間づくりのイベントが盛んですが、今後はより深化した絆づくりのニーズが増えてくると予想されるため、これに対応した独自のサービスを提供できればビジネスチャンスが生まれると考えられます。

「絆」は日本社会の長い歴史の中で培われた共通の価値観でありながら、戦後の一時期は忘れられ、あるいは潜在化されていました。それが今回の震災を機に復活したものであるため、今後この意識がなくなる可能性は少なく、ビジネスを考える上での重要なキーワードになります。

また、今回の震災により発生した原発事故も人々の意識を大きく変えましたが、「安全」「省エネ・省電力」がキーワードになります。

今後、省エネ・省電力のニーズに対応したさまざまな製品・サービスが開発されると予測されますが、小回り性を持つ中小企業はニッチ市場を開拓することでビジネスチャンスが生まれる可能性があります。

代替エネルギーへの転換も進んでいますので、これに関するビジネスも多く発生しています。

またLED化のように、従前はランニングコストの節減よりも初期投資が大きいと判断されて進まなかったものが、電力供給環境が変わったことで費用対効果が逆転して促進されるケースも多く見られます。

他にもこのような例があると考えられますので、注意深く観察することでビジネスチャンスが生まれる可能性を高められます。

さまざまな「意識の変化」を組み合わすことにより多くの新しいニーズが見えてきますが、自社の強みが活かせるニーズに焦点を絞り、差別化された商品・サービスを開発することが経営の安定と発展のために大変重要になります。

中小企業診断士:中津留 準(なかつる ひとし)

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