特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2012年10月「金融円滑化の出口戦略と経営支援」

●2012年10月「金融円滑化の出口戦略と経営支援」

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2012年10月 金融円滑化の出口戦略と経営支援

中小企業診断士 小池登志男

メールはkoike3qletter@ybb.ne.jpまで願います。

 
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1.「出口戦略」と『中小企業金融円滑化法』

来年3月に『中小企業金融円滑化法』の最終延長の期限が到来することとなります。
こうした背景から、地方銀行はじめ信用金庫、信用組合といった中小・地域金融機関では「出口戦略」にどのように対応すべきかといった模索が始まっています。
そもそも、「出口戦略」といった言い方は、ベトナム戦争の終結に向けて最少の犠牲で撤退するための戦略として、アメリカの国防総省が持ち出した言葉のようです。ベトナムからの撤退を目的とした撤退戦略といったものだったのでしょう。
『中小企業金融円滑化法』は、正式名称『中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律』といったもので、平成21年11月30日成立しました。 金融機関に対して、中小企業者から借入金の返済猶予等(借換、DESも含む)の申し出を受けた場合、これに対応することが努力義務とされています。
この法律の適用を受けて金融機関が対応した件数は、平成24年3月末までに285万件となっています。取扱金額では80兆円弱です。この数字は、累計でもあり複数の金融機関にまたがって条件変更を受けている中小企業者もあることから、適用を受けている中小企業者は推計で40万社から50万社と言われています。中小企業の1割程度がこの措置を受けたことになります。
この法律が、来年3月に期限到来となることから、監督官庁の金融庁は中小企業への経営支援(コンサルティング機能)の発揮を求めています。経営改善によって、返済猶予の状況から抜け出し、金融機関の貸出債権を健全化しようとするものです。
この法律の施行に伴って、『金融検査マニュアル』〔金融円滑化編〕が制定されましたが、この中で金融機関に対して取引先顧客への経営相談、経営指導(支援)、経営改善計画の策定支援が求められることとなりました。
平成24年4月20日に「中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ」(内閣府・金融庁・中小企業庁)が公表され、中小企業の経営改善・事業再生の促進をはかるため「出口戦略」が示されました。
このパッケージでは、以下のような方向性が示されています。これが「出口戦略」です。
@自助努力で経営再建が可能な中小企業に対しては、金融機関がコンサルティング機能を一層発揮して経営再建を支援する、
A財務内容の毀損度合いが大きく、債権者間調整を要する中小企業に対しては、再生支援機構(内閣府所管)や中小企業再生支援協議会(中小企業庁所管)を通じて事業再生を支援する

2.コンサルティング機能の一層の発揮

金融機関に対して、コンサルティング機能の発揮が一層求められています。
中小企業者への経営相談、経営指導(支援)および経営改善計画書の策定支援といったもので、『金融検査マニュアル』〔金融円滑化編〕や「地域・中小金融機関向けの総合的な監督指針」に取組みへの根拠が示されています。
この中でも、経営改善計画の策定支援は、最も重要な位置づけと考えられます。
通常、金融機関が金利減免や元金の返済猶予等を実施した場合、その貸出金は「条件緩和債権」として不良債権になってしまいます。しかし、『中小企業金融円滑化法』にもとづいて、返済猶予等の条件変更を実施した貸出金については、抜本的で実現可能な経営再建計画が策定されていれば、金融機関の支援を前提として条件緩和債権にはならないのです。
因みに、「実現可能性の高い抜本的な」計画の要件を示しておきます。

(1)「実現可能性の高い」とは
@計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること
A計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える
  追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと
B計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいも
  のとなっていること

(2)「抜本的な」とは
概ね3年(債務者企業の規模又は事業の特質を考慮した合理的な期間の延長を排除しない。)後の当該債務者の債務者区分が正常先となることをいう。
なお、債務者が中小企業である場合の取扱いは、金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」を参照のこと
なお、「当該債務者の債務者区分が正常先となる」要件についての説明は省略させていただきます。

この措置が終わってしまうと、どうなるのでしょうか。

平成24年7月4日に金融庁監督局総務課から「最近の金融行政について(金融円滑化の出口戦略等)」といった資料が公表されています。

この中に、貸出条件緩和債権の要件の弾力化といった取り扱いがあり、一定の要件に沿った「経営改善計画」の策定を前提に条件緩和とない措置が、恒久措置として認められとされています。この措置については、どのような運用になるのかは具体的に示されていませんが、中小企業者にとって「経営改善計画」の策定、それを前提としたモニタリングといった対応が、一層問われることとなります。計画にそった経営改善の実現をはかるためには「管理会計」の導入も中小企業者に求められるところです。

「出口戦略」では、金融機関に対して「経営改善計画」の策定支援はじめコンサルティング機能の一層の発揮が従来にも増して問われています。
                      以上

中小企業診断士 小池登志男

メールはkoike3qletter@ybb.ne.jpまで願います。

 
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