特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2012年5月 「CSRからCSVへ」

●2012年5月 「CSRからCSVへ」

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2012年5月 「CSRからCSVへ」

中小企業診断士 小畑 満芳

メールはmip530@gmail.comまで願います。


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今回は、「ファイブフォース」や「競争戦略論」で知られるハーバード・ビジネススクールのマイケル・E・ポーター教授が2010年末に提唱した経営コンセプトである「CSV(Creating Shared Value−共通価値の戦略)」を紹介したいと思います。

CSVは、「CSR(corporate social responsibility−企業の社会的責任)」のネクスト・ステップだと言われています。CSRは近年、企業にとっての免罪符のようにもてはやされ,日本でも形式的な社会貢献的CSRはしてきたけれど、本業から生み出されたCSRとは言えないものも多くありました。

ポーター氏が言うように、東日本大震災においても、義援金は多くの企業が拠出しましたが、、それでCSR予算が終ったとか、寄付以外に特に何もしていないし、する予定も無いという企業も多いようです。

身近な例で言うと、社員全員で朝ゴミ拾いをすれば、それがCSRを行っているという隠れ蓑になっていた訳です。

企業は、寄付やフィランソロピーを中心とする従来のCSR活動から脱却することが必要でした。ですから、CSRは事業から乖離してはならず、事業戦略と結び付いたものでなければならない。従来のCSR活動を「受動的CSR」とすれば、そこから抜け出し、共有価値の創出を目指す取り組み、つまり「戦略的CSR」に進化しなければならない。ポーター教授は、その戦略的CSRという呼称を新たに「CSV」に統一した訳です。

CSVは、“共通価値の創造”または“共益の創造”と訳されます。
企業の利益と社会的な課題の解決、競争力の強化を両立させることで、企業はもちろん社会にも価値を生み出そうというものです。

CSR(企業の社会的責任)の進化型であるが、社会貢献を“責任”ではなく“機会”ととらえることで競争力を高める“攻めの側面”がより明確になっています。ポーター教授は、社会貢献活動は形式的にではなく、積極的に行うことで、競争力を強化して利益を拡大、成長できると経営者に意識改革を促しています。

日本に目を向けると、東日本大震災による東京電力の原発問題で、企業は今自らのありかたを問われています。

見方を変えると、国家が企業に責任を押し付けていると言うことも出来ます。遅々とした問題処理は、政府与党の組織未熟論にあることは明らかですが、様々な見識やオブザーブがその組織論内に封じ込められてしまっている印象があります。

なぜこのような話をするかと言えば、“共通価値”は政治へも影響を及ぼすからなのです。ポーター教授は、「政府と市民社会は、事業活動を犠牲にして社会の弱点に対処しようとするため、多くの場合、問題が悪いほうにこじれる。解決策は「共通価値」の原則にある。

これは社会にニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるというアプローチである。企業の成功と社会の進歩は、事業活動によって再び結びつくべきだろう」と述べています。

ポーター氏は、企業の社会的な問題に関与する形として、第1ステップは「圧力政治」と名付け、第2ステップとして「CSR」を定義していて、現在は第2ステップにあるとしています。次の第3ステップが「CSV」ですが、それは価値を共有する段階です。この段階では、企業の事業戦略と社会を結び付ける。

社会問題を企業の事業活動とは切り離して別の課題として見るのではなく、事業戦略と一体のものとして扱うのです。なぜそれが必要かと言うと、まず、世界のありとあらゆる問題を解決し、すべての人を幸福にできる会社はありません。企業があらゆる社会運動をサポートしようとしても効果的ではないし、それで感謝されることもない。

次に、社会に及ぼす影響について考えると、企業は単にイメージや宣伝だけではなく、CSR活動で結果を出すことに集中する必要があります。

CSR活動を宣伝と考えている限り、様々な取り組みに手を出して結果を出せないままで終わってしまう。何をすれば本当に変化を生み出すことができるのか。そのことを考えなければなりません。社会と企業との間で価値が共有されるようになるのは、社会だけでなく企業も利益を得るからです。長い目で見れば、より持続可能な競争上のポジションを企業は作り上げることができます。

ここで、CSRとCSVの差異を以下にまとめてみます。


具体的な代表事例としては、インドにおいて、CSV戦略を通じて新しい市場を創り出したヒンドゥスタン・ユニリーバ(HUL)の石鹸「ライフボーイ」があります。

インドの農村部では、石鹸を使うという習慣がなく、泥などで手を洗っていました。この「衛生習慣がないため人々が不衛生な環境におかれている」という課題を解決するため、HULは、子供たちを中心に「チャテェトナ(健康的な生活への目覚め)」という手洗いキャンペーンを行い、実演とワークショップを通じて石けんによる手洗いの重要性を伝え、衛生への意識を高めました。そして、「衛生習慣がない」という課題を解決しつつ、「ライフボーイ」の市場を創り上げています。これから分かるように、CSV戦略は、BOP(bottom of the pyramid)市場と密接な関係があります。(この話は長くなるので別の回に譲ります。)

またCSVは、今後のコーポレート・ブランディングにも大きく影響を与えると考えられます。ソシアルメディアの爆発的な普及によって、ステークホルダーの力は強大化し、もはや企業は自らの評判やメッセージをコントロールすることが困難になりつつあります。

新しいメディアモデルは、新しい情報到達の方法を提供していますが、それは単なるコミュニケーションチャネルの拡がりというよりも、企業独自の豊かな関係性のネットワークを構築する機会として捉える必要があります。価値あるブランド構築と強いレピュテーションの維持は、マーケティングとコミュニケーションの責任者が共同で努力すべきことになりつつあります。

そしてその延長線上には、これまで述べて来たように、企業がCSR(Corporate Social Responsiblity)からCSV(CreatingShared Value)という視点で評価される時代へと大きく変わろうとしていることがあげられます。

自らの強みを社会的価値という視点から敢えて事業展開することによって新しい市場を創造していく。そこでは、マーケティングとコミュニケーションを統合するという新しいブランディングモデルが求められるようになります。

広告の世界でも、ただ「エコで環境に優しい!」などというアプローチでは、誰の心にも響かない。あの大震災の衝撃に陳腐化してしまったのです。

企業の環境コミュニケーションのハードルが何段階も上がりましたが、ここをクリアーし、多くの人に共感を届け、共有を作り上げる事ができれば、コミュニケーションとしては成功なのかもしれません。

Creating Shared Value。共有価値の創造。これが、今後のソーシャル・コミュニケーションの切り札になると考えられます。

中小企業診断士 小畑 満芳

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