特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2012年3月「後継者の育成について思うこと(子息が他社修行から帰ってくる)」

●2012年3月「後継者の育成について思うこと(子息が他社修行から帰ってくる)」

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2012年3月 「後継者の育成について思うこと(子息が他社修行から帰ってくる)」

中小企業診断士 佐々木 文安

メールはfumiyasusasaki@yahoo.co.jpまで願います。


■――――――――――――――――――――――― NPOみなと経営支援協会−■

経営コンサルタントして「事業承継支援」を専門分野の一つとしていることから、これに関するさまざまな相談を受けています。

特に多いのが後継者に関する相談ですが、前回から「後継者の育成」を中心に実際にあった相談と助言事例について紹介させていただいております。前回のテーマは「子息が学生」でしたが、今回のテーマは「子息が他社修行から帰ってくる」について紹介させていただきます。

相談先は、前回と同じく売上高3億円・従業員20人ほどの建設業を営んでいる56歳の社長(創業者)からありました。「大学を出た長男が後を継ぐというので同業大手に入れて5年になる。そろそろやめさせて会社に入れたいと思うが、どのように教育していったらよいだろうか」という内容でした。私からは、「社長としては、どのように考えているのですか?」とお尋ねしたところ、「現場に入れて、後は自分で仕事を覚えて這い上がってきて欲しいと思っているのだが・・・。」というものでした。

いかにもたたき上げでのし上がってきた社長らしい考えと受取れましたが、社長も56歳であり、元気に働ける時間もあと10年ぐらいしかないことから、下記のように「計画的」に育成を図ってはどうかとアドバイスをしました。
経営のアドバイスに唯一の正解はないと考えていますが、相談者が腑に落ちて実行して見ようという気になるものがもっとも適切なものと言えましょう。

(1) 事業承継計画の中で育成計画を考える

社長が後継者として長男を入社させるのであれば、自分が何歳で長男に社長の座を譲るかを決めて、そこから逆算して後継者の育成や株式の贈与や相続について考えたほうが良いと思います。

社長がもっと若ければ、社長の考えるような育成方法もあると思います。しかし、中小企業の平均的な社長交代の年齢が67歳前後であり、社長もこの年齢で引退すると考えた場合、「後継者が仕事を覚えて這い上がってくるのを待つ」という訳にはいきません。

社長交代までの時間が10年間ぐらいしかないことから、育成計画を立てて計画的に帝王学を施していくのが、最も合理的な育成方法であると思います。その計画を立案する際の考え方は、「主要業務について一通り経験させる」ということです。

(2) 主要業務を経験させる。

後継者には、社長になってから困らないように、主要業務について実際に経験して貰うことが第一です。創業者の場合は、否応でも主要業務を自らやらざるを得ず、これに合格した者のみが成功者として生き残っています。ですから創業者は主要業務について精通しており、何でも即判断できるのが実態です。

しかし、一般論として後継者にはそれができません。そこで、組織や体制をつくり、後継者の弱点を補強していくことが重要になります。しかし、その場合でも、主要業務を経験さえしておけば、社長になってその業務について「決断」する時に、より的確な判断ができるようになると思います。また、その業務に従事する人間の気持ちも理解できるようになり、社長に就いてからの人心掌握にも大いに役立つことと思います。ひとつの業務に就く期間は、最低でも2〜3年間は必要と思われます。

たとえば、建設業であれば、建設現場と営業、そして経理業務等が主要業務と言えるでしょう。これを2〜3年ぐらいの期間でローテーションし経験させるのが良いと思います。2〜3年で何が分かるかという人もいますが、その道の専門家になるわけではなく「経験」が目的なのですから十分と言えます。この3つを経験させるだけで6〜9年はかかります。

しかし、これは基礎の訓練であり、これを終えたら社長見習いとして、社長業を経験させてみることが円滑な事業承継につながります。

(3) 社長見習い期間を2〜3年は設ける。

主要部門の業務を経験するのと、社長見習いを経験するのとでは、業務内容がまったく違います。

社長見習いとは、経営全般について社長に密着して、またある時は代行して経験することです。このことにより、経営とは対外的にまた対内的にいかに大変かつ複雑で矛盾に満ちた仕事であるかを実感することができます。これまでは誰かの指示により業務を遂行していれば良かったのが、これからは自分の頭で考えて行動しなければならず、またその結果について経営者が責任を取らなければならないのだということに気が付きます。また、このような気づきが生まれるように教育していくことが大事だと思います。

これを2〜3年続ければ、経営者としての仕事を覚えるとともに、経営者としての自覚も否応なしに出てきます。その上で承継すると後継者の精神的負担もかなり少なくて済むと思います。

ところで、2〜3年たっても社長から見て満足がいくまで育たないことがあるかもしれません。その場合でも社長の座は譲ったほうが良いと思います。地位が器を作るということはよくあることですし、また次期社長を会長として育てるということもできます。なお、会長として育てる場合は、期間を限定して取組んだほうが良いと思います。

相談者である社長から後継者問題の相談を受けたのは、長男が学生時代からですが、今回は、他社修行から帰ってくる機会に相談があったものを紹介しました。そして、同社長はほぼアドバイスの内容に基づいた教育を実施しており、現在は現場の業務に従事させています。時々訪ねては後継者と面談していますが、なかなか熱心に仕事をしており、将来楽しみな経営者に育ちそうです。

企業経営において後継者の確保と育成はもっとも重要な経営課題であり、これに失敗すると企業の継続ができなくなります。したがって、経営者はどの経営課題にも優先して後継者問題について明確な方針を立て、早め早めに手を打っていく必要があると考えています。
以上
中小企業診断士 佐々木 文安

メールはfumiyasusasaki@yahoo.co.jpまで願います。


■――――――――――-―― NPOみなと経営支援協会−201203―■

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