特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2011年11月 「後継者の選定について思うこと(従業員かM&Aか)」

●2011年11月 「後継者の選定について思うこと(従業員かM&Aか)」

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2011年11月 「後継者の選定について思うこと(従業員かM&Aか)」

中小企業診断士 佐々木 文安

メールはfumiyasusasaki@yahoo.co.jpまで願います。


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経営コンサルタントして「事業承継支援」を専門分野の一つとしていることから、これに関するさまざまな相談を受けています。

特に多いのが後継者に関する相談ですが、これまでこのコラム欄で「長男か三男か」「子息か従業員か」「営業部長か経理部長か」というテーマで実際にあった相談と助言事例を紹介させていただきました。今回は、「従業員かM&Aか」という相談と助言事例について紹介させていただきます。

会社は売上高5億円・従業員50人ほどの運輸会社で、社長(80歳)は創業者で35歳の時に創業して現在に至っているとのことでした。子供は一人(息子)いましたが、芸術の才能がありその道に進みました。「芸術家で生きていくので後を継がない」と早くから宣言をされていましたが、それでも諦めずに待っていました。しかし、10年前の70歳になる時に子息に再度確認したところ謝絶されたので、従業員の中から後継者を選び10年かけて育てることにしました。そして候補者として2名を指名して競争させ、80歳になったらどちらかに社長職を譲ろうと考えました。

それから10年経ちましたが、後継者に指名した2人はどちらも経営者として頼りなく、社長の座を譲ったら会社が潰れてしまうのではないかと考えるようになりました。また、それなら一層のことM&Aで会社を譲り、資産を息子に残した方が良いのではないかと考えるようになりました。そこで、いろいろな方に相談し、またM&Aで売却のための交渉もしてみましたが、今一つうまくいかず、私のところに相談に来られました。

社長の話によると、後継者候補者に指名した2人は現在50代であるが、@大変まじめで仕事振りに問題ないが、人が良すぎて売掛金の回収などに厳しく対応できず大きな焦げ付きを作ってしまった、Aリーダーシップを発揮した仕事ができておらず部下から信用を得られていない、などから後継者としては無理と判断したとのことでした。また、M&Aについては、仲間内からの紹介で数社と面談したが、@会社に対する評価が低く、またA本社が自宅と隣接しており売却後も一部使いたいところがあるのに(本社内に夫人用茶室を設けており、先行き短いのでこのまま自由に使い続けたいとの要望)認めてくれない、ことなどから破談になっているとのことでした。

さて、皆さんはこの相談にどのようにアドバイスされますか?経営判断に唯一の正解はありませんが、相談者が腑に落ちるようなアドバイスが最も適切なアドバイではないかと私は考えています。社長からいろいろとお話を伺い、また2人の後継候補者に会ってみて、私としては次のようにアドバイスしました。

(1) 事業承継に当っての優先事項

今回の事業承継にあたって、社長は何を優先したいのかを突き詰めて考える必要があります。
今回の様に物事が八方ふさがりになった場合は、「何を最優先にするか」を突き詰めて考え、それを選択したら、他は捨てるという考え方にたたないと解決の道はないと思います。いろいろと悩んだ末の判断は、どちらを取ろうともメリット・デメリットがあり、将来的に差はないと思います。世の中には、片方が絶対的に正しくて片方が致命的に間違っているということはありません。
つまり、従業員に承継するよりもM&Aが間違いなく良いという判断はありません。

今回は、従業員が頼りないからM&Aの検討を始めた訳ですが、M&Aを進めようとすると茶室を使い続けたいという大事な奥様の強い希望に反することになります。高齢の奥様を大事にしようと思ったら、無理してM&Aをする必要はなく、従業員への承継を考えられたらどうでしょうか?従業員の方と面談しましたが、社長が言われるほど頼りないという感じはまったく受けませんでした。

(2)従業員に承継する場合の教育と自社株式の扱いについて

貴社の場合、10年前に従業員を後継者にすると決めてから、その従業員の仕事はずうっと営業マンのままです。部下を管理しているとはいえ、取締役にもせず内部管理の仕事もさせず、銀行との交渉ごともさせてきませんでした。これでは、経営者として頼りなく見えるのは当たり前です。
しかし、二人は極めて真面目で責任を担おうという気持ちは十分持っています。従業員に経営を任せる場合は、集団指導体制で運営できるようにするのがベストと思いますので、一人を副社長に、もう1人を常務役員などに昇格させて、合議で経営をする体制を作ってはいかがでしょうか?そして、一日も早く社長の担っている仕事を任せてみてはどうでしょうか?経営は、実際にやってみないと身につきません。

また、従業員に今後会社経営を任せる場合は、自社株式をかなりの程度所有させて、「自分の会社」という意識を形式的にも作っていく必要があります。中小企業の場合は、このよう形をとってガバナンスが機能するようにするのが良いと思います。

(3)M&Aを検討する場合の初歩的な対応

今回、M&Aの交渉を数社とやられたようですが、M&Aのプロを仲介に入れて交渉したケースは一件もありません。M&Aは資産と人と営業権を有している会社の売買ですから、事前に検討しなければならないことがたくさんあります。それを、仲介手数料が高いからと素人だけでやろうとするのは、所詮無理があります。
今後検討する時は、中小企業専門にしっかりとした仲介をしているM&A会社を紹介しますのでそこを絡ませて下さい。手数料を支払っても、結果として納得感は高まると思います。

半年間の相談でしたが、社長は元々の方針通り従業員から後継者を選ぶことにし、さっそく2人を取締役に選任し、副社長と専務に昇格させました。副社長は営業全般を見る、専務は経理・総務を見るという任務分担にしました。そして、定例的に会議を開催して合議で会社を運営する形を作りました。
社長からは、「この1年間M&Aで走り回っていましたが、今は経営の承継に専念しています。自社株式は少しずつ譲渡していく予定です。有難うございました。」と報告がありました。
以上
中小企業診断士 佐々木 文安

メールはfumiyasusasaki@yahoo.co.jpまで願います。


■――――――――――――――――― NPOみなと経営支援協会−201108―■

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