特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2011年9月「後継者の選定について思うこと(子息か従業員か)」

●2011年9月「後継者の選定について思うこと(子息か従業員か)」

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2011年9月 「後継者の選定について思うこと(子息か従業員か)」
中小企業診断士 佐々木 文安

メールはfumiyasusasaki@yahoo.co.jpまで願います。



■――――――――――――――――――― NPOみなと経営支援協会−■

経営コンサルタントして「事業承継支援」を専門分野の一つとしていることから、これに関するさまざまな相談を受けています。

相談を受ける際には、最初に会社と個人の全体像(会社の事業内容・資産内容・株主構成、個人の資産内容・家族構成・家族関係など)を詳しくお聞きするとともに、相談者の考えている対応策とその理由についても根掘り葉掘りお聞きするようにしています。このことにより、事実関係を正確に把握することができ、また相談者の希望も汲み取ることができるからです。

さて、最近後継者選定に関して、「子息か従業員か」という相談がありました。

会社は売上高20数億円・従業員50人ほどの広告制作会社で、社長(65歳)が創業者として一代で築いた会社でした。社長には3人の子息・子女がおられ、長男(35歳)が入社しており、長女と次女はサラリーマンと結婚して専業主婦になっているとのことでした。社長としては、長男が後継者に相応しい力量を身につけたら、社長の地位を譲り会長になる目論見をしているとのことでした。

ところで、何故相談に来られたかというと、@長男が外での修業を終え当社に入社し営業を10年ほどやらせているが後継者として頼りない、A社内では長男と同じ年の従業員A君が仕事は良くできるし周囲からの信頼も厚い、B税理士などが長男よりA君を後継者にした方が会社としては安泰ではないかと言っている、とのことで長男を本当に後継者にして良いか迷っているとのことでした。

そこで、早速長男に面談してみました。長男は育ちの良さが感じられ、やや優柔不断なところが見られましたが受け答えは的確でした。仕事は社長(父親)が全部仕切っており、意見を言っても自分の指示通りに動けと言うばかりだと言っていました。A君にも会ってみました。なかなかの好青年で、外交的で営業力もありそうでしっかりした人物との印象を受けしました。社長の指示に従いよい業績をあげているとのことでした。税理士が推薦したのも肯けました。

さて、この相談に皆さんはどのようにアドバイスされますか?
経営判断に唯一の正解はありませんが、実行する方が腑に落ちるようなアドバイスが最も適切なアドバイではないかと私は考えています。社長からいろいろとお話を伺い、また長男やA君とも面談した上で私としては次のようにアドバイスしました。

(1)後継者の適性判断と後継者育成の仕方

適性がないと烙印を押された人が名経営者になっている実例は数えきれないほどあります。
今回のケースは、後継者として入社させながら、後継者教育を計画的にやらずに、「自分の指示通りに動け」として一従業員と同じように扱ってきたそのつけが出たものと思います。経営者にするためには、営業だけでなく、製作現場や経理なども一定年数経験させていくことが大事です。このような育て方をすることにより、経営者としての自覚が育ちます。現時点ではやや優柔不断な面があるかもしれませんが、コミュニケーション能力は高く、人当たりも良いことから、経営者になれる能力は持っていると考えます。とにかく、他の業務も経験させて、仕事を任せて育ててみてはどうでしょうか。

それから、営業で良い成績を上げているから経営者に向いているというのは完全な間違いです。経営は、会社全体をバランスよくコントロールしていくことですから、むしろこの能力が高い人が経営者に向いています。このコントロール能力は、学ぶことにより習得できます。営業が良くできる人が社長になって会社を潰したケースは多くあります。

また、後継者も生身の人間ですからいつ病気で倒れるかもしれません。どんな企業でも複数の後継候補者がいたほうがよいと思いますので、A君についても営業だけでなく、他の分野の仕事も経験させておいた方が良いのではないでしょうか。また、長男を社長にした時は、番頭としての役割期待を明示したほうが良いと思います。

(2)創業社長から二代目に事業承継をするうえで最大の課題は社内の体制整備。

創業者はすべての業務を理解しているのでフラットな組織で経営できますが、二代目は組織で役割分担し合意を大事にしながら経営するしかありません。そう考えると、優柔不断だから適性がなく、外交的で営業力があるから適性があるという考え方はやや短絡的すぎます。むしろ慎重な性格で、組織を活用してバランスよく経営ができる人が後継者としてベストと思われます。
そして、現経営者が心掛けるべきは、組織で仕事ができるように体制をしっかり整備することです。貴社の場合は、営業、現場、管理部門にそれぞれの責任者を置き、責任者が自らの責任で仕事を遂行していく体制を作ることです。このようにしておけば、誰がトップになっても、仕事は滞りなく行われると思います。

(3)自社株式の承継と金融機関借入についての個人保証

自社株式の承継と金融機関借入についての個人保証は、子息が承継する場合はそう大きな問題にはなりませんが、従業員が承継する場合は大きな問題となります。自社株式については、資本と経営を分離するという考え方で対処する方法もあります。しかし、多額の借入がある場合、資産の裏付けのない従業員が保証に加わるというのは、一歩間違えれば従業員が破産するという事態に直面することになるので極めて慎重に考える必要があります。

以上を考えれば、引き続き長男を後継者と位置付けて後継者教育を本格的に始めることが必要ではないでしょうか。また、A君は素晴らしい人材ですので、長男の番頭としての役割を期待して育成してはどうでしょうか?このほうが利害関係者の理解も得やすいと思います。

結論からいいますと、相談者はこのアドバイスを受入れ、長男を引き続き後継者として位置付け、直ぐに経理部門に配置転換して銀行交渉を任せることにしました。あとで良く考えてみたところ、相談者はやはり長男を後継者にしたかったが、育成方法が分からなかったので、その方法を相談に来たのではないかと思いました。
以上

中小企業診断士 佐々木 文安

メールはfumiyasusasaki@yahoo.co.jpまで願います。



■――――――――――― NPOみなと経営支援協会−201109―■

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