特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2011年 3月 経営理念について その3

●2011年 3月 経営理念について その3

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2011年 3月 経営理念について考えてみましょう。(その3)

中小企業診断士 東條 寮(つかさ)

メールはttojo@plum.plala.or.jpまで願います。


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●経営理念を定着・発展させていく段階(組織文化として定着をはかる)

前回、経営理念の社内浸透・社外への認知をはかる時の着眼点についてそのポイントを述べました。そこで、今回は、どうやって社内に定着させ、またゆくゆくは企業文化として発展させていくかということについて考えてみます。
   
●どうやって社内に定着させていくのか?

経営理念を社内に定着させていくための主なポイントは、3つあります。
具体的には、@社長の率先垂範、A社員との絶え間ないコミュニケーション、B仕組み化する(共有のための仕組みを作る)ことです。

@ 社長の率先垂範

経営理念の実現においては、社長自身の率先垂範が最も重要です。これまで何度も述べてきたとおり、経営理念とは、自社の経営に対する社長の基本的な考え方(思い)であり、この理念の実現には、社長の強い意志が必須です。

特に中小企業においては、社長の意思がそのまま社員へ浸透するため、社内外への発信段階はもとより、この定着段階においても、最も重要なのはこの社長の率先垂範です。

たとえば、昭和測器の鵜飼社長が理念の率先垂範を重視するのは、企業経営では「従業員との信頼関係」が大切であるとの信念から来ています。自らが理念を体現した行動を率先垂範することで、従業員との信頼関係を深めることになり、理念の浸透、そして「企業力」の向上、ひいては企業文化としての定着につながるとの考えからなのです。
  
A 社員との絶え間ないコミュニケーション

社長の率先垂範と同時に、社員とのコミュニケーションもこの定着段階において非常に大切な要素なのです。

 たとえば、昭和測器の鵜飼社長は、「従業員との信頼関係」を高める上で、従業員との絶え間ないコミュニケーションを大切にしています。日頃からのコミュニケーションを通じ、たとえ個人的な話でも常に一緒に問題を解決しようという姿勢が従業員との信頼関係を築いていくと考えているのです。

また、外食産業の坂東太郎の青谷社長も、従業員はもとより取引先とのコミュニケーションも大変重視しています。

たとえば、その中でも特徴的なのがイベントで、毎年開催される事業戦略発表会があげられます。この事業戦略発表会は、全社員のみならず取引先までもが一堂に会して1日がかりで行っている のです。そのために、2ヶ月も前から準備し、当日は、一人ひとりが掲げた目標を達成するということで、会社の経営理念である、“人間大好き、親孝行”の実現をめざし、個人、会社、地域の幸せに近づくことができるという確信を全員で共有するための一日にしているのです。
これら社員や取引先との絶え間ないコミュニケーションが、経営理念(社長の思い)を正確に伝えることになるとともに、組織文化としての醸成、定着につなげているのです。
B 仕組化する(共有のための仕組みを作る)

 3つ目のポイントは、個々人の実践を組織として共有するための仕組みを作ることです。
 社長の率先垂範とコミュニケーションが車の前輪だとすれば、この仕組み化することは車の後輪とも言えるものです。
  
具体的には、以下のような経営理念定着のための共有化サイクルを回し続けることが重要なのです。


          
・方向付けをする・・・まずは、社長自身が経営理念の構築をはかり、方向付けをすることです。(社長の思いの明文化)

・実践する   ・・・次の段階は、社長の率先垂範のもとに具体的な目標を実践する      ことです。(経営理念を踏まえた、具体的な目標の実践)
          理屈だけでなく、まずは一歩踏み出すことが重要です。

・反復する  ・・・3番目の段階では、テーマ設定に対し、何度も何度も繰り返しやってみることが必要です。この段階は非常に重要であり、単に数回実践するだけでは、理念の浸透はできません。何度も何度も繰り返し実践することが重要です。

たとえば、サイボクハムでは自社の経営理念実現のため、10数年以上も前から、毎年、自社製品を国際コンクールに出品し続け、客観的な評価をクリアすることにより高品質を維持し続ける努力をしています。

・気づく   ・・・実践+反復で初めて体得するのです。
             実践を繰り返すことにより、個々人の中で気づきが生まれ、これまでは気づかなかった新たな行動ができるようになるのです。

・共有する  ・・・最後の段階は、個人の気づきを組織として共有することです
     様々な個人の気づきは組織で共有することにより、はじめて組織文化として形成されるようになるのです。
        そのための有効な手段としては、たとえば、気づきからの体験を朝礼で発表する、社内報へ掲載するなどがあげられます。

たとえば、昭和測器では社内報の発行を10年以上に続けており、個々人が活動の中で気づいた点をお互いに社内報に掲載することにより、コミュニケーションの円滑化をはかったり、理念の共有化を行ってきているのです。

また、坂東太郎では店長候補等を対象とした社長塾を、定期的に開催し、そこで理念の共有化をはかってきています。

このサイクルを回し続けることにより、経営理念の定着をはかるとともに、新たな気づきをふまえ企業文化を形成していくことが可能となるのです。

また、社長と社員との絶え間ないコミュニケーションにより、経営理念にもとづく企業風土づくりに発展させていくことができるようになるのです。

以上、3回にわたって企業理念の構築から社内浸透・社外への発信、企業文化としての浸透までを、順を追ってお話してきました。同時に、企業理念に基づく、すばらしい経営を行っている事例としてサイボクハム、昭和測器、ばんどう太郎を挙げてきました。

個々の方法論は、業種・業態あるいはそれぞれの社長の経営理念構築の背景、思いによって異なりますが、社長の率先垂範、社内外とのコミュニケーション重視、ならびに上記の知恵化サイクルを回し続けるという点では共通するものであるといえます。

これから経営理念を構築される方、あるいはどうやって社内に浸透・定着化していけば良いか迷っている方々に対し、少しでも参考して頂けることがあれば幸いです。

参照事例
 ばんどう太郎:http://www.bandotaro.co.jp/

 サイボクハム:http://www.saiboku.co.jp/
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 昭和測器  :http://www.showasokki.co.jp/
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中小企業診断士 東條 寮     

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