特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2011年 3月 「データベースマーケティングによる集客術」後篇

●2011年 3月 「データベースマーケティングによる集客術」後篇

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2011年 3月 「データベースマーケティングによる集客術」 後篇

中小企業診断士 栗田 剛志

メールはt-kurita@m9consulting.bizまで願います。

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前篇よりの続きです。

4.A店の顧客情報取得計画

まずは下降している売上にストップをかけ、回復させるための方策を考えて行くことにしました。
オーナー、従業員の皆さんに整理してもらった問題点をベースに、以下の3つの事項に対して重点的に手を打ち、コストをかけずに売上を向上させる施策を打つこととしました。
@来店していただいたお客様の情報を収集すること
A新しいお客様のうち一人でも多くの方にリピートしてもらうこと
B提供したい情報を提供したいお客様に確実に届けること

まずは、今来店してくれているお客様について知ることと、そのお客様に対して情報発信できる連絡先を獲得することに着手しました。

収集する情報は、携帯電話のアドレスに重点をおきました。理由は、対象となる顧客のほぼ全員が携帯電話を所有しており、普段肌身離さず持ち歩いているので、タイムリーな情報提供を個別に提供できること、メールを使えば、データベースを活かして低コストで運営できること、が挙げられます。

お客様の携帯電話のアドレスを獲得するといっても、個人情報に対してこれだけ敏感になっている現在、単純に教えてくれとお願いしても、そう簡単には集まりません。
そこで、来店客に対してアンケート調査を実施し、その際にワインのプレゼントや次回来店時の割引券を送ることを条件に携帯電話のメールアドレスを獲得していきました。

アンケートを実施することで、お客様の携帯電話のメールのアドレスを取得し、当店からの案内を送らせてもらえる許可をもらいました。
また、当店への来店動機を把握することで、新しい顧客の獲得に役に立てることができまた。
 
アンケートで収集した携帯電話のメールアドレスに、不定期にてサービス情報やキャンペーン情報を送る販促策を打ったところ、はっきりした効果を得ることができました。

顧客の属性を、「ファミリー」、「カップル」、「独身」に分け、その属性に合わせた情報を発信していきました。具体的には、雨の日の特別セットメニューや時間限定のドリンクサービスクーポン、カップル限定デザートサービスクーポンが好評を博しました。

情報を送信したお客様が新しいお客様を同伴していただいた場合には、そのお客様にドリンクのサービスをすることで、新規顧客の獲得にもつながりました。

その日の予約の入り具合や、天候をみて機動的な販促策を打つことができるようになったことで極端に売上の少ない日を減少させることができるようになったことと、同伴により来店人数が増えたことでお客様ひと組の客単価が向上させることに成功しました。

飲食店としておいしい料理を提供するのは当然のことです。A店にとっても、長年愛され続けてきた料理に関しては自信を持っていました。当店に来ていただいたお客様に喜んでもらうには、料理のみならず食事自体を楽しんでもらいたいと考え、お客様とのコミュニケーションを強化する策を打つこととしました。

複数で来ている客には会話が弾むように、一人で来ている客には声をかけて世間話をするようにといった、お客様がただ食事をするだけのために来店するのではなく、コミュニケーションをとる場として来店していただけるように心がけました。

こういった積極的にコミュニケーションをとることで、お客様に抵抗なく個人情報を開示してもらうことにつながりました。

地元密着型のこじんまりとしたレストランならではの地道な方策を行うことで、顧客満足度を向上させると当時に、顧客情報の収集にはげみ、データベースを積み上げていったのです。

本事例は飲食店ですが、集客を強化する上で、データベースをどう集めるかは、どんな業種にも常につきまとう課題です。今回実施したような割引の他には、次回の来店時に使えるクーポン券や、サンプルの提供、お得なセット販売、限定品、下取り・買取といった切り口をもとに顧客に訴求し、データを集めることができます。

また、得ることができた顧客情報をもとに、再来店を促すサービスを随時提供していきます。  会員限定の割引やポイント制度、会員だけに配信されるお得な情報、あるいは新製品・新サービスなどのモニターになってもらうことが喜ばれます。

「データベースマーケティング」とは、どれだけの顧客リストを持っているかにかかっており、集めた顧客情報に対して何を提供するかで、集客は大きく変わってきます。

本来であれば、ITを活用することで、本事例ももっとスマートに実施することができます。本事例の企業は、規模が小さいことと、IT投資をするほど資金的に余裕がなかったため、システムにはほとんどおカネをかけず、来店を促すための販促金におカネを使いました。将来的には、今蓄積している顧客情報をITにのせ、効率のよいシステムで運営しようと考えています。

いずれにしても、発信先となるお客様の情報がない限り、どんな魅力的なサービスも意味をなしません。どうしたら顧客情報を得ることができるかに知恵を絞る必要があるのです。

そのためには、顧客情報を得る代わりに、「お客様が得をする」、「お客様にとって新しい」、「好奇心をそそる」という3つを意識したものを提供しなければなりません。
 
5.自店を見つめなおす

A店においては、このような取り組みによって集客を確実に増やすことに成功し、21年の下半期にようやく売上の減少に歯止めがかかり、22年に入ってずっと好調な数字が続いています。

売上が下がっていることを景気の悪化のせいにすることは簡単です。
外部環境にこれだけ悪い材料がそろっていればそっちにばかりに目がいってしまい、自社における悪化の原因に目が向かなくなってしまいがちです。

本事例では、売上の減少を外部環境のせいにばかりするのではなく、オーナーと従業員が自社を見つめ直し、自分たちが「お客様のことを何も知らない」ということを認めることから始めました。

集客には、地道な努力が必要となります。今回の場合であれば、来店していただいたお客様の情報をひとつひとつ集めていった成果です。集めた顧客情報に向けて、自社の強みを活かした「来店する理由づけ」を情報として発信し、ひとつひとつその反応を検証することでさらに効果的な集客ができるようになります。

これだけ市場が冷え込み、消費者が生活防衛に入る中で競争に生き残るためには、なぜこの店に食事にくるのかという理由付けが必要となります。
市場から退場する店とは、この「明確な理由付け」ができていない店であり、この「明確な理由付け」をお客様に伝えられていない店のことなのです。

中小企業診断士 栗田 剛志

メールはt-kurita@m9consulting.bizまで願います。

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