特定非営利法人東京都港区中小企業経営支援協会NPOみなと経営支援


●2010年 6月 「会社法施行後5年目を迎えて」

●2010年 6月 「会社法施行後5年目を迎えて」

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2010年 6月 「会社法施行後5年目を迎えて」
中小企業診断士 中津留 準

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 平成18年5月に会社法が施行されて、会社に関する諸制度が大きく変わり、また大幅に規制緩和がなされました。それから4年経過し、5年目を迎えています。その間、自身の顧問先や幾つかの区に勤務して行った経営相談、中小企業支援機関などの委託により行った診断などで体験した事例なども交え、中小企業がどのように対応すべきかについてお話させていただきます。

◆資本金をいくらにすべきか
(1) 創業時の資本金
資本金はその事業を行うのに必要な額ですから、事業の業種・業態や規模により異なるため、一概には言えませんが、最低限度必要な額というものはあります。ところが会社法施行以来「1円でも会社が作れる」という言葉が流行ったため、新規に創業する多くの人たちを惑わせてしまいました。

事前に相談を受ける場合は、「資本金はできるだけ多くする」ようにアドバイスをいたしますが、設立後に相談を受けることも多々あります。あるとき、本当に資本金1円の会社と出会い、驚きました。

その企業から資金調達の相談を受けましたが、このままでは金融機関から相手にされるわけがなく、先ず自らが資金をつくって増資を行い、その後に考えようということになりました。

別の会社の例では、資本金5万円で設立した後に資金調達の相談を受けました。固定費の少ない事業を営む企業でしたが、それでもこれでは難しいと考えて、先ず増資が必要であると説きました。その後半年ほどを要しましたが、身内等から資金を集めて百万円単位の額に増資して借入も実現し、現在は事業も軌道に乗りつつあります。ただ、このために登記費用が重複して発生し、また事業開始が半年ほど遅れるという大きなデメリットが生じました。

新法では、設立時に500万円までであれば、簡単な手続きで現物出資が認めらますので、出資金が十分になく、事業に使える資産を持っている場合はこれを加えて資本金を構成することをアドバイスしています。特に個人企業から法人化する場合には、この現物出資が有効に活かされます。

ただ、資本金は多いほどよいとはいっても別の視点も必要です。
消費税は売上が1千万円以上になった翌々年度から納付義務が発生するため、一般的には創業後2年間は納付義務がありません。しかし、資本金1千万円以上で設立すると、初年度から消費税納付義務が生じますので、資本金を決める場合の一つの視点としては考慮すべきでしょう。

(2) 増資が必要になる事情
資本金を決める最も大きな要件は、当然ながらその事業を営むのに必要な額ということになります。しかし、別の視点も必要になります。

一つは法律で規定された中小企業の定義です。
製造業、建設業等は3億円、卸売業は1億円、小売業、サービス業は5千万円以下の資本金が中小企業と規定されています(別に従業員数の要件もあり、どちらかが満たされればよいということになっています)。これを超えますと、中小企業向けの制度上のメリットがなくなるため、重要な要件となります。

 次に税制度の問題があります。
東京では法人都民税の均等割りがあり、黒字赤字に関係なくすべての企業に一律にこの税金がかかります。この額は資本金で決まり、1千万円以下、1千万円超、1億円超などで変わります(別に従業員数も関係しますが、ここでの説明は省略します)。現在は、1千万円までは7万円、1千万円超1億円までが18万円となっているため、この視点も入ってきます。

このような中で企業が増資する場合は、事業拡大のための資金を調達する場合と、他のマイナスをカバーするための場合とありますが、前者については多くの書籍や資料で説明をされていますので、ここでは後者の「他のマイナスをカバーする」場合の増資に触れます。

私が出会った中で、貸借対照表では債務超過になっていて、かつ多額の借入金がある企業が多々見られました。しかし、ほとんどの場合この借入金の中には社長からのものが含まれ、債務超過分を超えた金額になっています。

赤字により不足する資金を、社長個人が補填して経営を可能にしている構図です。財務諸表の内容の良し悪しは融資を受ける場合に影響しますが、金融機関や信用保証協会は社長からの特に返済を求めない借入金は資本金と見なして査定してくれますので、実態として債務超過でなければ、あえて借入金を資本金に振り替えなくてもよいでしょう。

ただ、事業活動において取引先企業や行政機関などから財務諸表の提出を求められることがあります。この場合決算書からは借入金の内容までは分かりませんので、「財務超過の上、借入金が多い会社」として評価され、大変不利になります。
このような場合、借入金を出資に変えて資本金を増やすことが、解決方法の一つになります。ただ、貸付金を出資する場合は現物出資扱いとなり、会社と社長個人の間の金銭消費貸借契約書が必要ですが、多くの場合、そのようなものはつくっていません。そこで現金出資の形にするため、会社は手持ちの資金をいったん社長個人に返済し、社長はそれを出資金の一部として払い込み、これを繰り返すことで決められた期限内に出資金を払い込む方法があります。ある企業が実際にこの方法で増資をしましたので、適法な手法として使えると思います。

◆個人企業が法人化する事情
 個人企業が法人化をする場合、主な理由は次の三つが考えられます。
@ 法人でないと許認可が取得できない事業を行う場合。
 A 業界や事業特性上、法人でないと受注や信用力で不利になる場合。
B 売上や利益が増加することにより、法人化した方が総合的に節税になる場合。

以上のうちBは税理士の分野なのでここでは触れません。
また@の場合も、例えば介護は許認可事業ですが法人でないと許可されないため、ケアマネージャーが独立して一人で居宅介護事業を営む場合も法人設立が必須であり、ほかの選択肢はありません。

ただAの場合は、法人化するか否かはその企業の置かれた環境や事業の特性により異なりますので、法人化のメリット、デメリットを事前によく検討して決めることが必要でしょう。

先ず法人化すると、個人企業時代に比べて経営内容がオープンになります。このこと自体はよいことですが、これを嫌う企業にとってはデメリットになるでしょう。

また法人ゆえにかかるさまざまな費用も発生します。しかし、このようなデメリットも考慮した上で、受注拡大や信用力強化のメリットが大きいと判断できれば、法人化へ進むべきでしょう。

最も一般的な法人化は株式会社設立なので、この場合の留意点をいくつか挙げます。
@すでに事業を営んでいますので、事業用資産はある程度持っていると思います。先に説明をしましたように500万円までの現物出資は簡単な手続きでできますので、この範囲までは現物出資をするとよいでしょう。

A決算後2カ月以内に確定申告をしなければなりませんので、この間の経理業務は大幅に増えます。この業務を税理士に委託する場合でも、自前で行う作業も通常月に比べてかなり増えますので、事業が忙しい時期と決算期が重なると負担が大きくなります。そこで、決算期を決めるときはこのことを考慮することが必要です。
ただ例外もあり、4月〜翌年3月を事業期間とする行政機関等との取引が多い場合は、これに合わせた方が便利です。

B小会社の場合、定款で役員の任期を10年まで設定できます。そして役員の任期は長く設定した方が手間も費用もかからないためメリットがあります。
しかし、社長と他の役員との間で将来摩擦が起きる可能性などが予測される場合は、長い任期ですとその間は円満に辞めてもらうことができなくなります。さまざまなことを想定して任期を設定することが必要です。

◆株式会社以外の主な会社形態
(1) 有限会社
会社法の施行に伴い有限会社の新規設立はできなくなりましたが、既存の有限会社には多くのメリットができました。一言で言うと、有限会社特有のメリットは残しながら、株式会社のメリットのほとんどを付与されたようなものです。

株式会社では役員の任期が設定されているため、任期ごとに登記し直さなければならず、また決算公告をする義務があり、これらにコストがかかります。
しかし、有限会社はこの必要はありません。一方、非公開の株式会社が行えることのほとんどは有限会社でもできるようになりましたので、今は大変有利な状態です。有限会社を株式会社に変えることは比較的簡単ですが、特別の事情がない限り、当面は有限会社を続けることをお勧めします。

(2) 合同会社
合同会社は新しくできた会社形態です。株式会社のように資本と経営を分離することはできず、出資者(社員という)が業務執行を行います。

また株式会社の利益配分や意思決定は出資比率(株式比率)で決まりますが、合同会社は社員間の合意により、どのようにも決められます。このような特性から、ソフトな経営資源を持つ異業種企業が、その資源を持ち寄って共同で事業を行う場合の会社設立などに適しています。また、株式会社に比べて設立費用が安く、有限会社と同様に決算公告は必要がなく、役員の任期もありません。

ただこのような、設立コストや管理コストが安いことに目をつけて、株式会社ではなく合同会社で起業するケースも増えてきました。これも一つの方法ですが、株式会社的な経営手法をとるのであれば、株式会社での設立が妥当と思います。

中小企業診断士 中津留 準(なかつる ひとし) 

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■―――――――――――――――――-― NPOみなと経営支援協会−201006―■

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